渥美利之法律事務所ATSUMI TOSHIYUKI LAW OFFICE

COLUMN

【2026年施行】共同親権とは?養育費制度の改正とあわせて弁護士が解説

離婚・男女問題

「離婚後は共同親権が原則になったのでしょうか」「共同親権では、子どものことを何でも二人で決めなければならないのでしょうか」「養育費は一律で月2万円になったのでしょうか」。

2026年4月1日に新しい制度が始まり、このような疑問を持つ方もいると思います。結論からいうと、共同親権と単独親権のどちらか一方が原則になったわけではありません。共同親権でも一方が単独で判断できる場合があり、法定養育費の月額2万円も通常の養育費の標準額や上限額ではありません。

2026年4月1日、父母の離婚後の子の養育に関する改正民法等が施行されました(民法等の一部を改正する法律・令和6年法律第33号、法務省「改正法の概要」)。この記事では、離婚後の親権、法定養育費及び養育費の未払いに関する制度を中心に説明します。

改正前と改正後の主な違い

項目 改正前 2026年4月1日以後
離婚後の親権者 父母の一方を親権者に定める 父母双方または父母の一方を親権者に定める。どちらか一方が原則ではない
取決めがない場合の法定養育費 法定養育費の制度はない 施行後に取決めなく離婚した一定の場合、主に子どもを監護する親が、他方に子ども1人当たり月額2万円を請求できる制度がある
養育費債権の先取特権 養育費債権について今回新設された先取特権はない 一定範囲の養育費債権に先取特権が付与される
養育費回収のための執行手続 財産開示、情報取得、差押えをそれぞれ申し立てる 一定の要件の下で、財産開示または給与情報取得から給与差押えへつなげるワンストップ執行手続が利用できる

※表は制度の概要です。親権者の指定、法定養育費、先取特権及び執行手続には要件や例外があるため、詳細は以下の本文をご確認ください。

知りたい内容から読む

1. 離婚後の親権者は共同親権または単独親権

親権とは、子どもの監護・教育や財産管理などについて、法律上の権限と責任を負うことです(民法820条、824条)。

改正前は、父母が離婚する場合、未成年の子の親権者を父母の一方に定める必要がありました。改正後は、離婚後の親権者を次のいずれかに定めます。

  • 父母双方を親権者とする共同親権
  • 父母の一方を親権者とする単独親権

法律上、共同親権と単独親権のどちらか一方が原則と定められているわけではありません。父母が協議離婚をする場合は、子どもの利益を考えて親権者を定めます。協議が調わない場合は、家庭裁判所が子どもの利益を考慮して判断します(民法819条、法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」Q3-1、裁判所「離婚後の親権者の定めに関する手続等」)。

家庭裁判所は、次のような事情を踏まえ、共同親権が子どもの利益を害すると認められるときには、父母の一方を親権者と定めなければなりません(民法819条7項)。

  • 父または母が、子どもの心身に害悪を及ぼすおそれがある
  • 父母の一方が他方から身体への暴力その他心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難である
  • その他、共同親権とすることが子どもの利益を害する

共同親権か単独親権かは、父母の希望だけで機械的に決まるものではありません。子どもの安全、父母と子どもの関係、父母間の関係その他の具体的事情を踏まえ、子どもの利益を中心に検討します(民法819条7項、法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」Q3-1以下)。

親権、養育費、親子交流、財産分与など離婚時に整理する事項は、当事務所の離婚問題の取扱ページでもご案内しています。

2. 共同親権でも一方が単独で判断できる場合がある

父母双方が親権者である場合、親権は原則として父母が共同して行います。ただし、すべての日常的な判断について、毎回、父母双方の同意が必要になるわけではありません(民法824条の2、法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」Q4-1以下)。

一方が単独で行える日常の行為

子どもの監護・教育に関する日常の行為は、父母の一方が単独で行うことができます。法務省は、食事や服装、短期間の観光旅行、子どもの心身に重大な影響を与えない医療、習い事などを例示しています(民法824条の2第2項、法務省「りこんポータル」Q5)。

これに対し、子どもの転居、進学先、心身に重大な影響を与える医療などは、一般に日常の行為には当たらない例として示されています。ただし、実際の判断は個別の事情によります(法務省「りこんポータル」Q5)。

子どもの利益のために急迫の事情がある場合

父母の協議や家庭裁判所の手続を待つ時間的余裕がないなど、急いで判断しなければ子どもの利益を害するおそれがある場合は、一方が単独で親権を行使できることがあります(民法824条の2第1項3号、法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」Q4-9)。

法務省は、次のような場合を例示しています(法務省「りこんポータル」Q6、法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」Q4-9)。

  • DVや児童虐待から避難するため、子どもを転居させる必要がある場合
  • 子どもに緊急の医療を受けさせる必要がある場合
  • 入学手続の期限が迫っている場合

これらの例に当てはまるように見える場合でも、単独で親権を行使できるかは具体的事情によって異なります。

DVや虐待からの避難について、加害行為の直後だけに限られるわけではありません。安全に関わる事情がある場合は、相手との直接協議を無理に進めず、警察、配偶者暴力相談支援センターその他の支援窓口や弁護士への相談を検討してください。

父母の意見が一致しない場合の親権行使者の指定

共同で決めるべき特定の事項について父母の意見が一致しない場合、家庭裁判所に、その事項について親権を行う者を父母の一方に定めるよう求める「親権行使者の指定」の手続があります(民法824条の2第3項、裁判所「親権行使者の指定調停」)。

なお、共同親権は、子どもが父母の家を交互に行き来して生活することと同じではありません。子どもの生活場所、日常の監護、親子交流、養育費は、親権と関係しますが、それぞれ分けて具体的に検討する必要があります(法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」Q3-2)。

3. 親権がなくても養育費の支払義務はある

親権と養育費は別の問題です。父母は、親権者であるかどうかや婚姻関係の有無にかかわらず、子どもが自己と同程度の生活を維持できるよう扶養する責務を負います(民法817条の12第1項)。

実際の負担は親権の有無だけで決まるのではなく、父母双方の収入、子どもの人数・年齢、監護状況などを踏まえて検討します。

そのため、単独親権となり親権者でなくなった親にも、養育費の支払義務があります。反対に、共同親権を選んだからといって、養育費を支払わなくてよくなるわけでもありません。

養育費を取り決める際は、金額、支払期間、支払時期、振込先などを具体的にし、書面に残すことが重要です(法務省「りこんポータル―養育費」Q3)。

  • 月額
  • 支払開始時期と終期
  • 毎月の支払日
  • 振込先と振込手数料

これらに加え、個別の事情に応じ、実務上は次の点も検討します。

  • 進学、病気など臨時費用の分担
  • 収入や監護状況が大きく変化した場合の協議方法

金額は、父母の収入、子どもの人数・年齢、監護状況その他の事情を踏まえて検討します。裁判所が公表する養育費算定表は一つの目安ですが、個別事情によって調整が必要になる場合があります(裁判所「養育費・婚姻費用算定表」)。

4. 養育費を決めずに離婚した場合の法定養育費

2026年4月1日以後に養育費の取決めをせず離婚した場合、離婚時から引き続き子どもを主として監護する、つまり子どもと主に生活して日常の世話を担っている父母の一方は、他方に対し、子ども1人当たり月額2万円の法定養育費を請求できる場合があります。

法定養育費は離婚の日から発生し、支払義務者は原則として毎月末にその月分を支払います(民法766条の3、法務省「父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました」Q1)。

支払う側が支払能力を欠く場合や、支払によって生活が著しく窮迫することなどを証明した場合には、全部または一部の支払を拒めることがあるため、具体的な要件は個別に確認する必要があります(民法766条の3、令和7年法務省令第56号、法務省「父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました」Q3)。

法定養育費は、父母の合意、調停、審判等によって具体的な養育費が決まるまでの、暫定的・補充的な制度です。子どもが18歳に達したときは、具体的な養育費が決まっていなくても法定養育費は終了します(民法766条の3、法務省「父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました」Q2)。

特に重要なのは、月額2万円が通常の養育費の標準額、推奨額または上限額ではないという点です。父母の収入等を踏まえた適正な養育費を、協議、調停または審判により具体的に決めることが大切です。

また、法定養育費は2026年4月1日より前の離婚には発生しません。施行日前に離婚し、養育費を取り決めていない場合は、父母の協議または家庭裁判所の手続で養育費を定めることを検討します(改正法附則3条2項、法務省「父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました」Q5)。

5. 養育費の未払いに対する先取特権・差押え制度

未払いへの対応方法は、養育費をどのような書類で取り決めたか、相手の勤務先や財産が分かるかによって異なります。

改正法では、一定範囲の養育費債権に「先取特権」が付与されました。これにより、父母間で養育費の取決めをしている場合には、調停調書や執行認諾文言付き公正証書などの債務名義がなくても、取決めを証明する資料を提出することにより、法律で定められた範囲で差押えを申し立てられる場合があります。

父母間の書面による合意、調停、審判等で定めた養育費について先取特権が付与される上限は、子ども1人当たり月額8万円です。2026年4月1日より前に養育費を取り決めていた場合も、先取特権の対象になるのは同日以後に発生した養育費です。月額8万円を超える部分が消滅するわけではなく、超える部分を差し押さえるには、別途、強制執行の根拠となる書類等が必要になる場合があります(民法308条の2、令和7年法務省令第56号、改正法附則3条1項、裁判所「養育費に基づく差押え」)。

もっとも、養育費の合意内容や法定養育費の発生を示す書類、未払額、相手方の財産など、手続に必要な資料の確認が必要です。制度ができたことで、自動的に支払われたり、必ず全額を回収できたりするわけではありません。

調停調書、審判書、判決、一定額の金銭の支払について直ちに強制執行に服する旨の陳述(執行認諾文言)が記載された公正証書などがある場合は、それらに基づく強制執行を検討できることがあります(民事執行法22条5号)。

財産開示・第三者からの情報取得とワンストップ執行手続

2026年4月からは、相手の勤務先が分からない場合などに、財産開示手続または給与情報に関する第三者からの情報取得手続を利用し、判明した給与債権の差押えにつなげるワンストップ執行手続も設けられています。ただし、利用には事前の手続などの条件があります(裁判所「養育費等のワンストップ執行手続(財産開示)」「同(第三者からの情報取得)」)。

※第三者からの情報取得を利用する手続では、原則として3年以内に財産開示期日が実施されていることが必要です(裁判所「養育費等のワンストップ執行手続(第三者からの情報取得)」)。

どの手続を利用できるかは、取決めの方法、未払の時期、相手方の勤務先・預貯金等の情報、必要書類によって異なります。

6. 2026年4月より前に離婚した場合

2026年4月1日より前の離婚について、親権者の指定が自動的に共同親権へ変わることはありません。施行前に単独親権となった場合に共同親権への変更を求めるときも、父母が合意している場合を含め、家庭裁判所の手続が必要です(民法819条6項、法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」Q3-15、裁判所「親権者変更調停・審判」)。

既に養育費の取決めがある場合、その内容が改正法の施行だけで自動的に変更されるわけでもありません。収入、子どもの進学、監護状況など、取決め後に事情が変化した場合には、養育費の増額・減額について協議または家庭裁判所の手続を検討することがあります(民法766条2項・3項、裁判所「養育費増額・減額調停」)。

法定養育費は、2026年4月1日より前に離婚した場合には発生しません。ただし、通常の養育費を請求できないという意味ではありません。

7. 離婚前チェックリスト

未成年の子がいる場合、離婚届の親権者欄だけを決めれば十分ではありません。次の事項を、子どもの生活を中心に整理しておくことが大切です。

  1. 共同親権と単独親権のどちらが子どもの利益にかなうか
  2. 子どもが主に生活する場所と日常の監護
  3. 進学、医療、転居などの意思決定方法
  4. 養育費の金額、期間、支払方法
  5. 親子交流の方法、頻度、受渡し方法
  6. DV・虐待・つきまとい等がある場合の安全な連絡方法
  7. 合意内容を公正証書等にする必要性

父母間に暴力、威迫、強い支配関係がある場合、対等で安全な協議ができるとは限りません。子どもや父母の安全に不安があるときは、直接の話合いを優先せず、警察、配偶者暴力相談支援センターその他の支援窓口や弁護士へ相談することを検討してください。

共同親権・単独親権の選択、子どもの生活場所、養育費の金額や回収方法は、父母と子どもの状況によって検討事項が異なります。次のような場合は、個別事情を整理したうえで法律相談を検討することが考えられます。

  • 共同親権と単独親権のどちらが子どもの状況に合うか判断できない
  • 子どもの生活場所や日常の監護をどのように定めるか整理できない
  • 子どもの転居、進学、医療について父母の意見が一致しない
  • 養育費の金額、終期、進学・病気等の臨時費用を決められない
  • 合意を公正証書にするか、調停等を利用するか判断できない
  • 養育費が支払われず、利用できる回収方法を確認したい
  • DV・虐待等があり、相手と安全に協議できない
  • 施行日前に離婚しており、親権者や養育費を見直したい

当事務所では、親権や子どもの生活、進学・転居・医療等の意思決定、養育費、合意を残す方法、未払養育費への対応などを、個別事情に沿って整理します。DV・虐待等がある場合は、安全に配慮した連絡方法や手続も検討します。個別の結論や手続の結果を保証するものではありません。

相談時には、戸籍関係書類、収入資料、現在の監護状況、養育費に関する合意書や公正証書、支払履歴、父母間の連絡記録などがあると、状況を整理しやすくなります。弁護士費用の案内も事前にご確認いただけます。

よくある質問

DVや虐待がある場合も共同親権になりますか

一律に決まるものではありません。ただし、子どもの心身に害悪を及ぼすおそれがある場合や、DV等の事情を考慮して父母が共同して親権を行うことが困難な場合など、家庭裁判所が父母の一方を親権者と定めなければならない場合があります(民法819条7項、法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」Q3-6~Q3-8)。安全に不安がある場合は、相手との直接協議を無理に進めず、支援窓口や弁護士への相談を検討してください。

共同親権になると、子どもは父母の家に交互に住むのですか

必ず交互に住むわけではありません。親権、子どもの主な生活場所、日常の監護、親子交流は、関連しますが別々に検討する事項です(法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」Q3-2)。

法定養育費の月2万円より高い金額を取り決められますか

はい。月2万円は、具体的な養育費が決まるまでの暫定的・補充的な額で、標準額や上限額ではありません。父母の収入や子どもの状況を踏まえて適正な額を取り決めます(民法766条の3、法務省「父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました」Q4)。

2026年4月より前に離婚した場合も共同親権に変更できますか

改正法の施行だけで自動的に共同親権へ変わることはありません。変更を求める場合は家庭裁判所の手続が必要で、子どもの利益を考慮して判断されます(民法819条6項・7項、法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」Q3-15、裁判所「親権者変更調停・審判」)。

養育費は公正証書にする必要がありますか

必ず公正証書にしなければならないわけではありません。ただし、一定額の金銭の支払について直ちに強制執行に服する旨の陳述(執行認諾文言)が記載された公正証書にしておくことで、不払時にその公正証書を根拠として強制執行を申し立てられる場合があります。合意内容と作成方法は個別に確認してください(民事執行法22条5号、法務省「りこんポータル―養育費」)。

まとめ

2026年4月施行の改正で、離婚後の親権者は父母双方または父母の一方と定めることになりました。法律上、共同親権と単独親権のどちらか一方が原則ではなく、子どもの利益を中心に判断します。

共同親権でも、日常の行為や子どもの利益のために急迫の事情がある場合など、一方が単独で判断できる場面があります。また、共同親権と子どもの生活場所、親子交流、養育費は同じ問題ではありません。

法定養育費は、2026年4月1日以後に取決めなく離婚した場合の暫定的・補充的な制度です。子ども1人当たり月額2万円は通常の養育費の標準額や上限額ではないため、父母の収入や子どもの状況を踏まえた具体的な取決めが重要です。

親権、子どもの生活場所、養育費、親子交流などを整理したい場合は、離婚問題の取扱内容・手続をご確認ください。費用については弁護士費用の案内、相談を希望する場合はご相談・お問い合わせからご連絡いただけます。

※本記事は、2026年7月25日現在の法令・公的資料に基づく一般的な情報です。個別の事情についての法的助言や、親権・養育費に関する結果を示すものではありません。